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今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

artproject_stage17(その1)

~“暮らしの遺跡”?スターハウスからのぞく時間と夢~

大阪芸術大学 芸術計画学科の学生と谷悟先生、UR が協働で行うプロジェクトがまた新しい形で動き始めています。2019 年3 月2 日、大阪府堺市にあるサンヴァリエ金岡のスターハウスメモリアル広場(通称「キッチン公園」)を舞台に舞台芸術学科、放送学科の学生たちがキャストを務めるイマーシブシアター(没入型演劇)『団地貴族』の公演が行われました。それに先立ち、1 月29 日にスターハウスに関する勉強会を実施し、2 月16 日にはプレ企画として演劇で使う鍵を創作するワークショップと当時の時間を感じることが出来るノスタルジックカフェを開催しました。

1 月29 日は、今回の企画を進めるにあたってスターハウスについてもっと勉強しようと午前中に香里団地を視察し、午後からはサンヴァリエ金岡を訪れました。

香里団地ではUR職員さんから、スターハウス建設の背景や特徴などを学び、実際にスターハウスの中を見た学生達からは「天井が低い!」「脱衣所が無い!」など自身の生活と比較して驚きの声が多く上がりました。「この広さだと3 人が限界じゃない?」と学生が言うと「所謂、“住宅双六”と言って永住を目的に作られたものではなかったので、この広さでも充分足りていたんですよね。」と職員さんが話してくださいました。
学生達は部屋の造りや部屋に残され当時の物から暮らしを想像し、人々の生活に想いを膨らませました。

サンヴァリエ金岡ではスターハウスメモリアル広場の見学をし、広場の建設などに携わられたUR 都市再生機構OBの岩本一良さんからお話を聞くことも出来ました。実際にスターハウスが建っていた場所の1階部分の基礎のみを残して取り壊され、その上に施工されたメモリアル広場は、広場としてだけでなくスターハウスの遺跡の様な存在に感じられました。

現在メモリアル広場は1930 年代1950 年代そして1990 年代とそれぞれの部屋を覗くことが出来ます。洗濯機や靴箱、本棚など生活用品の細部までこだわって作られた広場に「かわいい~!」と学生から歓声が上がりました。3 月2 日にこのメモリアル広場で演じる役者たちも当時の暮らしを想像しながら目を輝かせていました。

企画をメインで引っ張っている芸術計画学科2 年生の松野幸恵さんが岩本さんに「今回、メモリアル広場で演劇を行う事についてどう思われますか?」と質問した際には「メモリアル広場は現在遊び場などとしても親しまれていますが、次世代へ継承する想いも込めて作りました。演劇を通して“時”を見せることで次の世代に受け継ぐということが出来るという点について、とても良いと思います。有意義な時間になるのではないでしょうか。」と語られました。

~かつての憧れ“スターハウス”が、再び団地と人を繋ぐ~

2 月16 日はメイン企画となる「団地貴族」に向けたプレ企画として、ノスタルジックカフェと演劇に参加する際に使用する鍵を作るワークショップが、サンヴァリエ金岡西集会所にて行われました。

脚本・演出を担当した芸術計画学科2回生の松野幸恵さんは「メイン企画『団地貴族』の宣伝も兼ねた、よろしくお願いしますという意味を込めたご挨拶の企画です。住民の方々に金岡団地の歴史や魅力をもっと知ってもらえると嬉しいです。」と話しました。

ワークショップの開始と共に早速、森田勉自治会長が来てくださいました。続いて、かわいいお子さんと若いお母さんが会場に足を運んで下さり、会場は賑やかな声で溢れました。森田会長は「どんなのを作ったの?」と、にこやかな表情で子供たちと交流されていました。

「まず、割り箸で作られた軸をもとに、紙粘土で好きな形を作ってください。」「持ち手の部分も作ってくださいね。」と学生たちが手際よくレクチャーしました。
紙粘土で鍵の形が出来上がったら絵の具を塗って、乾かします。「雰囲気が出る様に錆びた色にしようかな?」「薔薇をつけてみたよ!」と様々な形の鍵を思い思いに、制作しました。
参加者からは「普段できないような体験ができて、とても楽しかったです。」「また作りたい!」と親子共に、嬉しい声を聞くことが出来ました。

ワークショップでは、バラエティ溢れる素敵な鍵たちが作られました。散歩を通して、改めて団地と向き合うことで、鍵づくりのヒントが得られたのではないでしょうか。

集会所の和室にはスターハウスの当時の暮らしや雰囲気を味わうため、ノスタルジックカフェが設えられました。欄間には、古い自然木で作られた“ウェルカムバード”が団地の方々をお出迎え。

床の間には、谷先生が金岡団地に建っていたスターハウスの写真を展示しました。また、その頃に使われていたメトロノームを鳴らし、過去に流れていた時間と現在をつなぐインスタレーションを展開させました。

カフェに訪れた人々はスターハウスで暮らした時代に人気があったノリタケなどのメーカーが製造したカップとソーサー、ポットで紅茶やクッキーを味わいました。

金岡団地に約50 年以上住んでいるという辻田洋三さんは、 「スターハウスは入居希望の倍率が高かった。水洗トイレがあるのは夢だった。」と語りました。 最近引っ越してきたばかりだという女性に「スターハウスメモリアル広場はこの写真にある建物やったんやで。」と語る場面も見られました。

東三国ケ丘小学校に通う1 年生から5年生までの子供たちも集合。一気に賑やかになりました。スターハウスメモリアル広場を通称「キッチン公園」と呼び、皆でよく遊んでいるのだと教えていただきました。楽しくワークショップで鍵を作り終えた後は、カフェでお菓子をぱくぱくと頬張り、ちょっと背伸びした女の子は澄ました顔で苦めのレモンティーを啜りました。「なんで和室なのにヨーロッパみたいな食器があるの?」西洋の暮らしに憧れていた当時の暮らしに気づく鋭い発言も。学生から配られた「団地貴族」のパンフレットをめくり、何が行われるのか、興味を示していました。メトロノームを指差し「こんな古いものがあるの?どこかから奪ってきたの?」と質問をして、谷先生を困らせる場面もありました。

終了間近、お友達のお誘いで「カフェだけでも」と駆けつけて下さったのは金岡団地2 棟にお住まいの笹山恭子さん。笹山さんは金岡団地に住まれて30年。スターハウスに住んでいた知人がいたため、何度も訪れたことがあるのだと言います。スターハウスの踊り場について、「広いので子供の遊び場になっていいじゃない、って思っていました。」また、その他にも「日当たりの良さやベランダの造りが良くて、羨ましかったですね。」と当時の記憶を語って下さいました。
「建設途中、見たことのない形に興味津々で皆で見に行った。」とも教えて下さいました。「当時はそれだけ噂になったんでしょうね。」懐かしそうに語られていました。

今回のワークショップやカフェを通して、この団地にスターハウスが建っていた夢がある時代を知る方々に、貴重なお話を伺うことが出来ました。学生たちにとって暮らしと共に育まれている団地ならではの繋がりに触れる体験となりました。

本プロジェクトの総合ディレクターを務める大阪芸術大学芸術計画学科教授の谷悟先生は、「ノスタルジックカフェを催すことで、住民の皆さまと出会い、レトロなティーセットで、1960 年代、70 年代の空気を味わいながら交流の場が出来、愉しめたことは大変うれしかった。この団地にスターハウスが建っていた頃の様子を住民の皆さまからお聞きすることができたことはなによりも大きな収穫であった。演劇を創り込んでいく上で貴重な情報となるだろう。」と語られました。

3 月2 日に開催される『団地貴族』では、これらのプロセスが活かされた素敵な時間が生まれることでしょう。

テキスト +写真 /田邊 真優(芸術計画学科 3年生)松井 加帆(芸術計画学科 2年生)
監修/ 谷 悟 (芸術計画学科教授)

 

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