Life

今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

artproject_stage15(その3)

ARの驚きと、言の葉づくりの楽しさ  学生の責任が築き上げた大きな実り 

   阿武山アートカレッジのプログラム第3弾が、330日(金)31日(土)の2日間、阿武山団地7番街コム広場・集会所及び同8番街に設置されているパブリックアート作品周辺を中心に開催されました。平成29年度のアートプロジェクトの集大成として、学生たちが主導した「ARアニメーション ~『Mar Magician』から生まれた阿武山の精~」と、「Coloring DAY ~阿武山を彩る言の葉ワークショップ~」が実施されました。



学生たちが作成したフライヤー

~4年間の足跡を振り返って~
 大阪芸術大学×UR アートプロジェクトは、4年目となり、研究調査から企画制作までの道のりを少しずつ辿ってきました。初年度は、UR賃貸団地に設置されているパブリックアート作品の調査を実施しました。学生たちと一緒に団地を訪ね、アート作品の背景を探求したり、団地の構造物などに隠されたアートを見つけたり、アートの領域の広さを学びました。

3年目は、富田団地(大阪府高槻市)で自治会のみなさんと協働し、アートプログラムに取り組みました。



そして今年度は、当初よりアイデアが立案されていたAR(Augmented Reality:拡張現実)技術を使った3Dアニメーションを完成させました。これまでの活動で築き上げられた学生たちのアイデアが実を結ぶ一年となりました。
 
~春休み返上の苦しい日々~
 事前の調査で、美術家であり、大阪芸術大学短期大学部デザイン美術学科非常勤講師の川島慶樹氏の作品への思いを直接聞いていた学生たちは、今回のARアニメーションの舞台を高槻・阿武山団地(大阪府高槻市)に設置されている川島氏の作品「Mar Magician」にすると決めていました。
 その仕組みは、事前にアプリをインストールしたスマートフォンを「Mar Magician」にかざすと、プログラミングされた3Dアニメーションが浮き出て動き出すというもの。アニメーションに登場するキャラクターは、2017年11月18日に行われた「阿武山アートカレッジ 第2弾」のキャラクター開発のワークショップで、住民の皆さんが描いてくれたキャラクターをもとにデザインしています。

 実際にARアプリの開発は、学生たちの粘り強い精神力で達成できたと言えます。開発メンバーの中心として、春休み中も時間を忘れて取り組んだ大阪芸術大学芸術計画学科2年生の小田望楓さんは、その時の様子をこのように振り返ります。
   「まったく知識のない状態からのスタートでした。完成させるためには、4種類ほどのソフトをマスターしないといけなくて、解説書を読んだり、インターネットで調べたり、一つ一つクリアしていきました。最初は、メンバーで手分けしていたのですが、完成に近づくにつれ分業できなくなり、さらに難しい壁に突き当たりました。その都度、心が折れそうになり逃げ出したいほどの気持ちになりました」と語ってくれました。
 ARアプリの制作は、サークルの先輩で、放送学科広告コース4年の田中大樹さんに色々と指導をしてもらい、また、ARサイトデザインを含め、ARアプリの監修をアートサイエンス学科教授の市川衛先生に担当していただくなど、皆が力を合せて、実現に至らせました。

~住民の皆さんへのアプローチ~
 新しいことにチャレンジする。大阪芸術大学×UR アートプロジェクトは、学生もUR都市機構にとっても、新たな挑戦から始まっています。その支えになっているのが、お世話になる団地の住民の皆さんの温かい気持ちです。時には厳しい意見で学ばせていただきながら、前進できたことに感謝しています。このことは、大阪芸術大学芸術計画学科教授の谷悟先生が学生たちにいつも伝えているアートプランニングの心得にも通じます。
 「今回の企画は、まちのシンボルとして設置されたパブリックアートが時間の経過とともに徐々に環境の一部になってしまうことをふまえ、先進的なメディア表現を融合させることで、新たな愉しみ方を提案することがコンセプトになっています。」と谷悟先生は語られました。
 ARアニメーションを通して、阿武山団地に設置されているパブリックアートの魅力に気づき、再度光を当て、住民のみなさんのアートに対する関心や意識を高めてほしいという願いを込めた点が最も大切な考えになると思います。

 「ある時どうしても解決できない操作があり、インターネットで調べていると、その回答を掲載している人に出会いました。それから、わからないことをその人にメールで連絡し、細かく教えてもらえたので、なんとか完成できました」という小田さんを、当日、その本人が訪ねてくれました。思いもかけない新たな交流が深まるのもチャレンジした成果の一つだと思います。
 3Dアニメーションを見た人は口をそろえるように「おお、すごい!」と驚きの声を上げます。住民の皆さんにとっては日常のいつもの風景に溶け込んでいるアート作品ですが、ARアニメーションの技術を駆使したことで、アート作品の見方が変わり、アート作品への関心を高めることにつながっていくと思います。


曲「こえ」 ©四宮

~試行錯誤を繰り返した言の葉づくり~
 もう一つのプログラム、「Coloring DAY ~阿武山を彩る言の葉ワークショップ~」は、7番街コム広場・集会所で行われました。牛乳パックでつくった和紙で木の葉を作り、広場に設置した大樹に葉を茂らせました。
 作り方は、牛乳パックを洗い表面のフィルムを剥がし、紙の部分、水、のりをミキサーにかけ桶に浮かせます。あらかじめ作っておいた型に適量を漉して、取り出して乾燥させます。乾燥には、アイロンを使いました。
 木の葉の型は、いつも学生たちのアイデアを実現してくれる通信教育部美術学科4年生の大地泰輔さんのお手製です。和紙を漉し、取り外すときに崩れることもしばしばで、学生たちと相談しながら形状の工夫に苦労したようです。同時に、学生たちは、のりの分量を何度も繰り返し、べたつかずに乾きやすく、ある程度の硬さになるまで試作を繰り返しました。

 広場に設置する大樹は、鉄筋と針金でつくられ、大地さんが大活躍してくれました。幹をつくり、枝を伸ばし、ここにもアートのセンスをキラリと輝かせてくれました。

~自分の役割に責任を持つ、学生たちの姿~
   今回、阿武山団地で実施したプログラムは2つありました。そのほとんどを5人の2年生が中心となって企画し、当日に向けた準備をました。それぞれが自主的に役割を持ち、その役割に責任を持つ。学生たちから発せられる「責任」という言葉に、学生たちの成長を感じて、谷悟先生の表情が和らぎます。
 「学生たちの成長は、企画のコンセプトを極めつつ、住民の皆さんへの期待にも応えようとする意識の高まりです。アートプロジェクトを通して団地に暮らす皆さんに接することで、絆という交流が生まれます。団地の子どもたちに楽しんでほしい。より多くの住民に参加してほしい。自分たちも当日を楽しみにワクワクする。そのために、どうすればいいのか。その答えを2年生の5人は見つけ、1年生たちも理解し、行動してくれていると思います。また、一人では何もできないが、みんなと一緒ならば、大きな目標に向かうことができる。そんなふうに思ってくれていると嬉しいですね。アートプランニングは、一人ではできません。多くの仲間に支えられ、それぞれが役割を担い、それぞれが責任を持って一生懸命に努力する。その結果、住民の皆さんとともに学生も楽しい時間を過ごすことができれば大成功だと思います」と、谷悟先生が阿武山アートカレッジの一年を語ってくれました。

 阿武山アートカレッジの目的は、阿武山の魅力に関心を持つ人々を引き寄せ、集い、交わり、楽しむことで、このまちの創造性が高まり、健やかに育まれるきっかけになることです。昨年の富田団地と同様に、今回も一番成長したのは責任を背負って踏ん張った学生たちだと思います。4月からはそれぞれに3年生、2年生となり、新入生を迎えます。これからも住民の皆さんの期待に応えられるよう、アートの魅力を再発見し、新しいプロジェクトに挑戦していきたいと思います。

撮影:長谷川朋也

住所:高槻市奈佐原二丁目7

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