Life

今日も団地では楽しい笑い声が聞こえます。人と人がつながる”団地暮らし”の魅力とは。

人と人がつながる 団地暮らしの魅力

阿武山に、花をいっぱい咲かせよう

「大阪芸術大学×UR アートプロジェクト」は、間もなく満3年を迎えようとしています。2回生で本企画の立ち上げメンバーとして参加した学生たちは、大阪芸術大学芸術計画学科教授の谷悟先生のもとを離れ社会人になりました。今回は、先輩たちの意志を受け継いだ2回生と1回生の10人が7月30日(日)に催した阿武山アートカレッジ初のプログラムである「Blooming Day~フラワーペーパーで満開ワークショップ」の様子をご紹介します。

 

企画力・想像力・発想力の融合

 大阪芸術大学のメンバーは、芸術計画学科1回生5人、2回生5人、通信教育部美術学科で学ぶ大地泰輔さん、そして谷悟先生です。大地さんは、本プロジェクトの始動時からのメンバーであり、学生たちのアイデアを実現してくれる頼りがいのある現場監督役です。阿武山アートカレッジは大阪芸術大学生、大地さん、谷悟先生が一丸となったプログラムです。

 「自らが住む場と向き合い、その魅力を感じ、愉しむことをコンセプトとした取り組みをユニークなかたちで進めたいと考えたのですが、まずは、アートカフェをきっかけに住民が出会い、会話を弾ませ、ご近所というコミュニティを意識していただくことからはじめたいと考えました。阿武山アートカレッジは、様々なワークショップを地域住民の皆さまに受講していただくだけでなく、一緒にプロジェクトを推進させるスタイルを大切にしたいと考えており、今回のメニューは、大きな意味があります」と谷悟先生が説明してくれました。阿武山アートカレッジの実現には、阿武山の歴史、文化、団地の成り立ち、住民のみなさんの暮らしなどの把握が欠かせません。学生たちは事前に行ったフィールドワークから様々なキーワードを立て、発想を連鎖させ、アイデアを膨らませます。その答えの一つが、“様々な世代に向けた会話の種をまき、花を咲かせる”ことでした。

 

フライヤー(表面)と作業開始前のミーティング

 

夏本番の太陽の下での準備

 大阪芸術大学を出発した学生たちが、11時に到着しました。梅雨明け後の夏本番の太陽が照りつける中、準備が始まりました。慣れない手つきで電動ドリルを扱い、机とイスを組み立てる1回生の額から汗が流れていました。

2回生は、“ゆるふわ“をイメージした白、紫、ピンクの3色の美しいタープ(布)を張り、団地の中にランドマークを創り出しました。タープ越しのやわらかい陽ざしの下で、団地のみなさんに集っていただき、思い思いのフラワーペーパーの花を咲かせようという試みです。

 日差しが和らぎ始めた午後4時頃になると、犬の散歩や買い物に出かける人々がこちらをうかがっています。用意したフライヤーを片手に歩み寄る学生たちが、「アートカフェをしています、お立ち寄りください」と声をかけます。真っ先に興味を持ってくれたのは、5年前から五番街に住んでいる宮本さん。最近ピアノを始め、芸術大学の学生と知り、親しみをもって参加してくれました。学生さんが、「テーブルクロスに描かれたリーフにみなさんがつくってくれるフラワーペーパーを飾り、満開の花を咲かせたいんです。よろしくお願いします」と伝える言葉を頼もしそうに聞いてくれました。

 引っ越し先を考えていると住宅の下見に来られた田辺さんファミリーの参加でにぎやかになってきました。「生活するだけの場所ではなくて、休日には、いろいろな人と交流を持てるイベントは大賛成です。学生さんたちに教えてもらうのは、娘たちも楽しいと思いますし、人々の交流が盛んな団地は華やかに感じますね」と、嬉しい言葉をいただきました。

 買い物途中に立ち寄ってくれた黒川さん母娘は、「娘は、折ったり、描いたり、切ったり、張ったりするのが大好きなんです。まさかこういう場所でフラワーペーパーのような体験ができるとは思いもしませんでした。これからも参加させていただきます」と、カラフルな大きな花を作ってくれました。

 終了間際に訪ねてくれたのは、中学生の仲よしグループ。帰宅途中にみつけたアートカフェが気になって、家で着替えてすぐに駆けつけてくれました。テーブルでは中学生と大学生の和気あいあいとした女子会タイムになり、笑い声が響き渡り、終了時間ぎりぎりまでたくさんの花を作ってくれました。初めての出会いの中に、小さな友情という絆が育まれたようです。

 この企画を提案した2回生の百瀬知晏さんは、「初めてのことで戸惑いも多く、友達や後輩に迷惑をかけてしまいました。準備をしている時は、あまりの暑さに住民の方に参加していただけるか不安になりましたが、アートカフェに来てくれたみなさんのおかげで、自信にもなりましたし、私自身の成長にもつながったなと思います。次回は、今回の反省を踏まえて、みんなで相談している他のアイデアも実行できるように準備したいと思います」。

 学生たちを見守っていた谷悟先生は、「今回の目的は、団地のみなさんへのごあいさつです。阿武山におじゃまさせていただき、団地の空間の特性を読み取り、演出するインスタレーションというアート表現で、日常生活の場にアートカレッジを創ろうとする挑みでした。集会所だけを使用する閉じられたかたちを避け、オープンな空気を漂わせることで、この場に人を誘(いざな)わせるねらいがあります。今回は、そのフォーマットを確立させることができたと思います。これからこの場所で如何なるワークショプを展開させ、何を築いていくのかを考えることが大切ですが、学生たちは、集まってくださったみなさんの言葉の中から多くのヒントを得たものと確信しています。自分たちの考えを押し付けるのではなく、住民の皆さまとのコミュニケーションを吸収しながら新しいアイデアを出し合い、ともにアートを創りだしていく醍醐味を学んで欲しいと思います」と、阿武山アートカレッジの可能性に期待を込めていました。

 広大な敷地に点在する住棟は、緑や公園などのパブリックスペースでつながっています。人々が行き交い、ときに心安らぐ時間を過ごす空間だからこそ、人々が集い、楽しみ、笑い合い、絆を深め合うのにふさわしい場所になります。その空間に、学生たちのアイデアで非日常を演出することで、暮らしの中にオアシスが生まれます。

 阿武山アートカレッジは始まったばかりです。住民のみなさんの温かい心づかいが、学生たちの喜びであり、成長の糧になります。団地に創出した“ゆるやかな学びの時間”は、単に作品を制作してもらうのみならず、阿武山の魅力を感じ、語り合う場としても機能させることができればと考えます。アートを通じ、“豊かなつながり”が芽生え、我がまちを想う意識がより一層育まれれば、とてもステキなことだと思います。

 これからもよろしくお願いいたします。

撮影:長谷川朋也

所在地:高槻市奈佐原二丁目7番

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